東京地方裁判所平成29年(わ)第285号

被告人は、被害者にナイフを突きつけ、同人から抵抗されると、ナイフを持った手を突き出したり、その右大腿部をナイフで突き刺すなどし、さらにその両手、両足を縛り上げ、厨房から一直線にカウンターに移動して金庫内に現金を見つけると、これを奪って逃走しているという一連の行為には、狂言強盗の合意があると信じていた者の動揺は見て取れず、売上金の着服を隠すために狂言強盗をするなら、合意をした店員を被害者役として実行しなければならないが、被告人によれば、Dからはその名前も特徴も聞かされておらず、しかも、Dから本件の実行を2回目に指示されたときに勤務していた店員は、1回目に実行を指示されたときの店員とは別人であったのだから、誰を相手に狂言強盗をすればよいのか、本当に狂言強盗の合意をしたのかにつき、強い疑念を抱くのが普通うであり、そもそも狂言強盗の指示にしては、不自然、不合理であるなどによれば、狂言強盗をするつもりであった旨の被告人の供述は信用できず、被告人には、遅くとも被害者にナイフを突きつけた時点において、強盗の故意があったものと認められた事例

被告人が、向かい合っていた被害者の上半身を目掛けてナイフを突き出して左上腕部切創を生じさせたとは認定できず、ナイフを持った手を被害者に押さえられている状態で振った際、あるいは、防御のためにナイフを持った手を突き出した際に上記切創を生じさせたとの合理的疑いが残り、被告人が、被害者を死亡させるおそれが高いと認識しながら左上腕部への攻撃を行ったとは認められず、また、被害者の右大腿部を突き刺した行為は、客観的に被害者を死亡させるおそれの高い行為であるとは認められないとして、被害者に左上腕部切創等の傷害を負わせて行為及び両手、両足を結束バンドで縛り上げた行為のいずれについても、被告人に殺意があったと認めることはできないとされた事例

判決全文

千葉地方裁判所平成30年(わ)第740号

Aの証言は、Aの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもAの番号が登録されていること、実際に被告人Y2の携帯電話機とAの携帯電話機との間に多数の通話履歴が残されていることと符合する上、覚せい剤を被告人Y2から購入した旨述べるBの証言とも合致し、その内容をみても、被告人Y2から覚せい剤を注文するに至った経緯や注文の際のやり取りについて、「覚せい剤」等の直接的な表現は避け、「ワンジー」「ゼロゴー」などと言って注文していたことや注射器を2本手に入れるために1gの覚せい剤を0.5gずつ2袋に分けてもらうよう依頼したことなどのエピソードを交えながら具体的に証言するものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Aの証言は信用できるとされた事例

Bの証言は、Bの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもBの番号が登録されていること、被告人Y2に覚せい剤を電話で注文した点については、これと符合する通話履歴が存在すること、丸めてシールで留められた状態で小分けされたチャック付きビニール袋入り覚せい剤が被告人両名方から複数押収されていること、被告人両名方から押収された出納帳に「C 5000」との記載があること、被告人Y2の使用する携帯電話に「Dさんの言う通り確かに悪いかも!Eが取り替えてって言って来てるから」「交換するのも用意してあります」とのメールが送信されていることなど、客観的な証拠に裏付けられており、その内容をみても、覚せい剤を購入するに至った経緯、覚せい剤を注文した際の状況、友人と共に覚せい剤を受け取りに行ったり、覚せい剤を交換してもらったりした際の状況等について、被告人Y2とのやり取りの内容を交えた具体的なものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Bの証言は信用できるとされた事例

Fの証言のうち、被告人Y2が配達や小分けを手伝っていたという点については、客のA及びBの各証言のほか、実際に覚せい剤入りのチャック付きビニール袋等に被告人Y2の指紋が付着していたことなどとも整合しているなどとして、Fの証言は信用できるとされた事例

これらの信用できる各証言によれば、被告人Y2は、被告人両名方で同居していたFから被告人Y1が依頼された覚せい剤の配達に同行することがあり、同被告人がFから覚せい剤の密売を引き継いだ後は、客から覚せい剤の注文の電話を受けて配達したり、自宅で覚せい剤の小分け作業を手伝ったりなどして、被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたものと認められ、これらの事情からすると、被告人Y2は、紙袋の中に入った本件覚せい剤の存在を認識しており、その所持については被告人Y1との間で共謀があったものと強く推認されると認められた事例

覚せい剤は、その所持や使用が厳しく禁じられている禁制薬物であって、日常生活の中でその意思に基づかずに体内に摂取される事態は通常考えられないから、被告人Y2の尿から覚せい剤成分が検出された場合には、特段の事情がない限り、同被告人がその意思に基づいて覚せい剤を体内に摂取したものと推認できることに加えて、被告人Y2の右腕前腕部及び右腕肘関節内側部分の血管上に複数の注射痕が存在すること、被告人Y2が被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたこと、Fが被告人両名方に同居していたときに、被告人Y2が台所のカウンター付近で、腕を紐で縛って覚せい剤を注射しているのを目撃していることが認められ、これらの事実は、いずれも上記推認を強めるものであるなどとして、被告人Y2は覚せい剤を自己の意思によりその身体に摂取したと認められた事例

判決全文