東京地方裁判所平成30年(わ)第1791号、第2433号、第2901号

被告人は、平成28年3月上旬頃及び同月10日、Cから判示第1の金銭の交付を受けるため、受注を水増しした資料を示して借入れを依頼したほか、Aの負債の返済先を製造業者と偽っており、同日に振り込まれた金銭は、Cに説明した製造代金という使途とは異なり、その大半がAの負債の返済に充てられ、残りも、製造代金には全く当てられなかったことから、被告人が、Cから受領した金銭を同人に約束した使途に充てるつもりはほとんどなかったことは明らかであるなどとして、被告人につき詐欺の確定的故意を認めた事例

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大阪高等裁判所令和元年(う)第1201号

被告人は当初、身元確認はもとより職務質問自体に一切応じず、その後、運転免許証を提示し、窃盗や覚せい剤の前科を多数有することが判明し、所持品検査とともに任意採尿を求められたのに対し、一切を拒否していたところ、被告人のこのような対応により、警察官らが職務質問開始当初に抱いた窃盗や覚せい剤使用の嫌疑は、相当高まったことは明らかであり、所持品検査や任意採尿に応じるよう繰り返し働き掛けていた警察官らの行為が、説得の域を超えた過剰なものであったとは認められないとして、駐車場付近で警察官が取り囲み、腕をつかむなどした行為の適法性を認めた事例

警察官が移動手段として被告人をタクシーに乗せなかった行為について、この時点では、被告人の嫌疑は相当高まっており、令状請求の準備が開始されてから既に約2時間が経過しており、実際に、この約1時間後の午前4時30分頃には裁判所に令状請求がなされているところ、このような状況からみて、被告人の所在を確保する必要性も高かったといえ、警察官がタクシーの運転手に対し、被告人の動きに応じて、乗車させずに発進させて立ち去るよう、あるいは、乗車させたまま発進させずに待つよう告げて、職務質問への協力を要請する行為は、職務質問中であるとの状況説明もなしに、端的に協力を要請する内容を大声で告げて指示するという、丁寧とはいい難い態様ではあるものの、被告人を乗車させるか、タクシーを発車させるかという最終的な判断はなお運転手に委ねられており、被告人を現場に留めて説得を続けるために必要な行為として許容される範囲内のものと解されるとして、上記行為の適法性を認めた事例

被告人が友人であるE方居室に立ち入ろうとした際に、追従していた警察官らが、玄関前に立ちはだかり、背中で玄関扉が開かないような体勢を取りつつ、通路の壁面に立った被告人に相対し、被告人に覆い被さるような姿勢でその両肩付近の柱を両手でつかんで被告人を制止するなどして、E方への立入りを阻止した行為は、被告人の自由な行動を相当程度制圧しており、任意捜査の範囲を超えた違法なものであるとした事例

しかし、他面において、被告人に対する嫌疑は相当強くなっており、本件阻止行為があった当時は、既に令状請求の準備も整え終えて、警察署から裁判所に向けて出発している段階に至っており、その執行に備えて、所在確保はもとより、罪証隠滅の防止を図る必要性も相当高かったといえ、罪証隠滅防止の観点からは、被告人が入ろうとしていた住居の居住者との関係性に照らすと、未だ所持品検査に応じていなかった被告人が、警察官の目の届かない居室内で罪証隠滅に及ぶ危険性は格段に高まることが想定される状況にあったから、被告人が居室内に入るのを制止して職務質問を続ける必要性はかなり高かったと認められ、加えて、本件阻止行為は、被告人の行動の自由を相当程度制圧するものではあるが、時間的には約1分程度という短時間にとどまっていて、長々と押し問答をしていたと評価できるものではなく、時間的には説得したら諦めて入るのをやめたといえる程度のものであったなどとして、本件阻止行為に、警察官らの令状主義先達の意図が、具体的に疑われるとはいえないとされた事例

職務質問開始から捜索差押令状の執行まで約5時間以上という相当長時間に及んでおり、警察官が終始追従して監視を続けており、被告人に対する不利益は小さくないなどとして、一連の行為全体が違法であると認められた事例

しかし、警察官が被告人に追従して監視していた行為全体をみても、時間的には長時間に及んでいるが、必要性が認められ、相当性についても、一部違法と判断せざるを得ない部分はあるものの、違法としてその過程から得られた証拠を排除しなければならないような重大な違法、すなわち、令状主義の精神を没却するほどの違法があったとまで評価することはできないとされた事例

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新潟地方裁判所長岡支部平成31年(わ)第41号、令和元年(わ)第86号

被告人には、A及びCと契約を締結した時点で、同人らの見合い相手となる特定の女性がおらず、また、被告人は、第三者からそのような女性を確実に紹介してもらえる当てもなかったのであるから、被告人には、結婚の希望を有する特定の女性を見合い相手として紹介できる具体的な当てはなかったというべきであるところ、このような事実自体、被告人に、結婚の希望を有する女性を紹介する意思がなく、詐欺の故意を有していたことを強く推認させるものであるなどとして、被告人に詐欺の故意を認めた事例

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東京高等裁判所令和元年(う)第1961号

原判決は、犯罪組織における位置づけとしては重要な意思決定を行う上位者ではなく、切り捨て可能な末端の受け子にすぎないという被告人の役割を踏まえた上で、高額の収入を得ようと自らインターネットを検索して組織に接触し、犯罪であることを認識しながら犯行に加担し、現金獲得という究極の目的実現のために不可欠かつ重要な役割を繰り返していることから犯意が強固であるなどとしたものであって、何ら不合理ではないとして、被告人を懲役5年(求刑懲役6年)に処した原判決の量刑は相当であるとされた事例

原判決後、実姉が被告人の社会復帰後の監督を申し出ていることが認められるが、一般情状であるから、量刑上考慮するにも限度があり、原判決の量刑を変更すべきものとは認められないとされた事例

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東京地方裁判所立川支部平成30年(わ)第1183号、第1268号、第1481号、第1598号、平成31年(わ)第80号、第317号、第520号、令和元年(わ)第730号

A供述は、被告人らから勧誘を受けるに至るまでの経緯や、勧誘の際のやり取り、各犯行を重ねる過程での被告人らへの報告状況や被告人らとの接触状況など、一連の事実経過を詳しく説明できており、内容面で明らかに不自然、不合理というべき部分は見当たらず、他の証拠との整合性という観点からみても、関係する客観的証拠が存在し、被告人らもそのとおり認めている複数の事実関係とも整合するところ、被告人らがこれらの機会にわたりAが本件特殊詐欺等の受け子等の犯行をするのを容易にしたり、受け子等の犯行を継続できるような環境を整えたりする行動をとっていたという事実関係は、本件特殊詐欺等の犯行への関与を否定する被告人らの供述と比べると、被告人らがAを本件特殊詐欺等に勧誘したとするA供述の方が、より自然に理解し得るものといえることに加え、Aには被告人らの関与の有無について虚偽供述をする動機や背景事情などは見当たらず、第三者と被告人らをすり替えて供述している疑いも生じないことからすれば、A供述は十分に信用できると評価された事例

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東京地方裁判所平成30年(わ)第2448号、第2971号、平成31年(わ)第363号

受取人において方々のアパートにその住人ではない者を受け取りに行かせ、これを直ちに運搬役を介して別の者のところに運ぶということは、送り主は送付先住所の者に送付しているつもりであるのに、それとは異なる者が受け取り、送り主が想定している者とは別の者のところに持って行っていることを想起させる事情といえ、ひいては、送り主が偽りを告げられて錯誤に陥り、受取場所に荷物を送付したものであることを、未必的にせよ認識させる事情といえるとして、このような事情を認識している被告人は、判示の各宅配便荷物について、これらが詐欺により送付されたものである可能性を認識していたものと推認されるとされた事例

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大阪地方裁判所平成31年(わ)第504号、第1119号、令和元年(わ)第1874号

Bは、布団の上に押し倒され毛布をかぶせられて押さえ付けられる直前に、被告人がズボンのチャックを開けて陰茎を見せ、息を荒げてBの呼び名を言うなどしたり、布団の上に押し倒し毛布をかぶせて押さえ付ける行為のときにも、被告人が性的な意味で興奮していたようにも理解される供述をしているが、このような供述内容は、犯行の経緯としてやや唐突なものであることは否定できず、反対尋問によってこのような疑問点のあるBの供述の信用性が確かめられているものでもなく、他方、被告人の供述は、その内容に特段の不合理な点はなく、財布を取りあってもみあいになるなどして押した経緯などはごく自然なものとして納得のいくものであるとして、Bの供述に依拠して事実を認めることは困難であるから、主位的訴因である強盗の成立を認めることはできないとして、予備的訴因である暴行、窃盗の成立を認めた事例

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東京高等裁判所令和元年(う)第1006号

被告人Y1は、平成29年12月までは、掛け子の中で責任ある立場を担いながら、詐欺の掛け子の役割を果たし、共犯者らと共謀して本件詐欺等を繰り返していたのであるから、そのような被告人が平成30年1月以降は実行行為を行っていなかったとしても、自らの名義で借りていた拠点を継続して提供し、同じような詐欺等が行われている同所への出入りを続ける中で、摘発の際は賃借名義人として捜査機関に対応するつもりであったなどというのであるから、平成30年1月以降の事実についても共謀が認められ、共同正犯が成立するのは明らかといえるとされた事例

詐欺罪が既遂となるためには、被告人や共犯者名義の口座に振り込まれるまでの必要はなく、被告人らが現金の支配を現実的に獲得すれば足りると解すべきであるとされた事例

本件は、虚偽の宝くじ等の当選話を言葉巧みに被害者らに信じ込ませ、何度も現金をだまし取るという犯行であるので、振込行為ごとに詐欺罪が成立すると考えるのは相当ではなく、被害者ごとに包括して詐欺罪が成立するとすべきであるとされた事例

詐欺罪と組織犯罪処罰法における犯罪収益取得事実仮装の罪は保護法益が異なる上、両者の行為の重なり合いの程度等からすると、これらを社会的に見て1個の行為と評価するのは相当とはいえず、両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当であるとされた事例

判決全文

甲府地方裁判所平成30年(わ)第281号、第310号、第384号、第481号、平成31年(わ)第83号、140号、令和元年(わ)第248号、第302号

高齢者からキャッシュカードを盗み取り、これに係る金融機関口座から現金を引き出す「受け子」、「出し子」の役を繰り返し、窃取したキャッシュカードは合計23枚、引き出し窃取した現金は合計1855万円を超え、そのほかに約320万円の現金も詐取している被告人に対し、懲役5年を言い渡した事例

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大阪地方裁判所平成29年(わ)第4124号、平成30年(わ)第1251号、第2351号

被告人が友人宅に立ち入ろうとした際に警察官が被告人の前に立ちはだかったり肩に手をかけたりなどし、更に玄関の扉が開かないようにした行為について、既に被告人に対する令状請求に着手した段階とはいえ、未だ令状発付前の任意捜査の段階であり、タクシーによる広域移動が想定されるようなタクシー乗車に関する場合と異なり、居室あるいは居宅への立入りにより捜査官において被告人の所在把握に困難を生じる事態に至ることも通常は想定されず、さらに、当時の被告人の言動に照らし、被告人が居室内で自殺あるいは自傷他害に及ぶ危険性も想定されない状況であったことから、本件において、被告人が友人方居室に立ち入ろうとした際、警察官が被告人に覆いかぶさるようにした行為は、被告人の自由な行動を相当程度制圧しており、そのようにして被告人の居室内への立入りを制限した行為は違法なものであったといわざるを得ないとされた事例

他方で、その違法性の程度についてみると、上記のような体勢で被告人の自由な行動を制圧した時間は1分程度であり、本件では警察官が職務質問開始後約30分で被告人に対する強制捜査の段階に入っていること、職務質問開始後、被告人の移動、行動が相当事由にされていること等に照らせば、本件警察官らに令状主義に関する諸規定を先達する意図があったとは評価し難く、そうすると、被告人の自由な行動を一時的に相当程度制圧した前記警察官の行為の違法性は重大なものではなく、弁護人が証拠排除を求めている本件各証拠を証拠として供することが将来における違法捜査抑制の見地からみても相当でないとは認められないとされた事例

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千葉地方裁判所平成30年(わ)第292号,609号,864号,1137号,1624号

被告人Y1は、平成30年1月以降、詐欺の電話を掛けるなどのことはしておらず、掛け子の固定給を受け取っていなかったとしても、本件詐欺グループに所属し、詐欺の犯行を遂行するのに必要かつ重要な役割を果たしていたことは明らかであって、本件詐欺グループへの関与の形態が変わった面はあったにせよ、詐欺等の共同正犯から離脱し幇助犯が成立するにとどまるというほどにまでその関与の程度が弱まったものとは評価できないとされた事例

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