大阪地方裁判所平成29年(わ)第4124号、平成30年(わ)第1251号、第2351号

被告人が友人宅に立ち入ろうとした際に警察官が被告人の前に立ちはだかったり肩に手をかけたりなどし、更に玄関の扉が開かないようにした行為について、既に被告人に対する令状請求に着手した段階とはいえ、未だ令状発付前の任意捜査の段階であり、タクシーによる広域移動が想定されるようなタクシー乗車に関する場合と異なり、居室あるいは居宅への立入りにより捜査官において被告人の所在把握に困難を生じる事態に至ることも通常は想定されず、さらに、当時の被告人の言動に照らし、被告人が居室内で自殺あるいは自傷他害に及ぶ危険性も想定されない状況であったことから、本件において、被告人が友人方居室に立ち入ろうとした際、警察官が被告人に覆いかぶさるようにした行為は、被告人の自由な行動を相当程度制圧しており、そのようにして被告人の居室内への立入りを制限した行為は違法なものであったといわざるを得ないとされた事例

他方で、その違法性の程度についてみると、上記のような体勢で被告人の自由な行動を制圧した時間は1分程度であり、本件では警察官が職務質問開始後約30分で被告人に対する強制捜査の段階に入っていること、職務質問開始後、被告人の移動、行動が相当事由にされていること等に照らせば、本件警察官らに令状主義に関する諸規定を先達する意図があったとは評価し難く、そうすると、被告人の自由な行動を一時的に相当程度制圧した前記警察官の行為の違法性は重大なものではなく、弁護人が証拠排除を求めている本件各証拠を証拠として供することが将来における違法捜査抑制の見地からみても相当でないとは認められないとされた事例

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東京高等裁判所令和元年(う)第1088号

本件各犯行に使用された携帯電話と被告人方から押収された携帯電話の発信地域は、具体的な所番地はもとより市区町村単位まで特定できたものではなく、都道府県レベルの比較的広域で符合するというに過ぎないものであって、他県への移動に伴う発信地域の符合も頻回に及ぶものではないことに照らすと、各携帯電話の発信地域の符合が、被告人がオペレーター役であったことを推認させる程度は原判決が説示するほど強いものとみるのは困難であるとされた事例

他方、Dの原審証言は、一定の裏付けがあるものであって、信用できることからすると、Dによる被告人の面割り供述が被告人の犯人性を推認させる程度は、原判決がいうような犯人性と矛盾しないという程度にとどまるものではないとみるべきであるとされた事例

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東京高等裁判所令和元年(う)第980号

Bが、視認した距離を当初の約30メートルから約92メートルと訂正しているとしても、また、日没の約14分前の時刻であったとしても、Bの視認条件は、さほど劣悪とはいえず、そもそも、Bは、当時、覚せい剤取締法違反の嫌疑を持って捜査のために被告人とAの動きを注意深く観察していたのであるから、観察が困難な状況であれば、移動などすることも想定できたのに、そのようにもしていないので、被告人がAに対し封筒様の物を手渡すのをBが視認できたとしても、不自然ではないとされた事例

被告人がAに対し、約0.438グラムの覚せい剤を無償で譲り渡したというのは、不自然さが否めず、Aの供述のうちこの部分は直ちには信用し難いところであるが、Aが、捜査段階では、被告人から本件覚せい剤を代金1万5000円で買ったと供述していたこと、かつてAが所属していた組織において、被告人の方が上位にあったことなどに鑑みると、Aは、原審公判において、被告人をかばうために上記のような不自然な内容を含む供述をしたと理解することが可能であるとされた事例

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さいたま地方裁判所平成29年(わ)第894号,第940号,第1030号,第1109号,第1110号

被告人Y1方と認められる居室内から本件各覚醒剤取引に用いられていた物品が発見されたこと、被告人Y1が使用していた自動車内から本件各取引に用いられていた物品が発見されたこと、被告人Y1が、本件各取引の行われた日時・場所と矛盾しない時間帯に、埼玉県羽生市内の被告人Y1方から、各取引において使用された車両と同一または類似の車両を使用して出かけた上、戻ってきていること、本件譲受人らが、写真面割りの際、運搬役として被告人Y1の写真を選択していることを併せ考えると、本件各取引における運搬役は被告人Y1であると認められるとされた事例

被告人Y2が使用していた携帯電話の発信区域の動きと密売人が使用していた携帯電話の発信区域の動きが高度に符合していること、被告人Y1が、被告人Y2が使用していたと認められる携帯電話の料金のチャージを行っていること、被告人Y2が被告人Y1と共に本件bBと推察される自動車のタイヤの交換を行っていること、B事件及びC事件のあった時間帯に、被告人Y2が使用していた携帯電話と被告人Y1が使用していた携帯電話との間において通話がなされていること、オペレーター役の密売人と数回面識のあるCが、前記密売人は被告人Y2であるとしていることから、被告人Y2がA事件、B事件及びC事件におけるオペレーター役であることについて合理的な疑いを入れる余地はないとされた事例

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