本件仕事の依頼内容は、他人に、多額の報酬を支払うことを約束した上、わざわざ香港からマレーシアまで渡航させて物品を受け取らせ、これを税関職員等に発見されないように日本に持ち込ませるというものであって、それ自体、運ばせる側にとって価値のある物であり、かつ、隠しておかなければならない物を扱うという点で不審なものであり、運ぶ物品がダイヤモンドであると言われていたとしても、もしかしたら覚せい剤等の違法薬物であるかもしれないとの疑いを生じさせるのに十分なものであるところ、被告人自身も、Bから依頼された際に、「こんなにおいしい話があるのか、違法薬物ではないのか」と尋ねたのであり、運ぶ物の中身を不審に思い、違法薬物が入っているのではないかとの疑いをもったのであり、その後、依頼に従ってマレーシアに行き、指示されたとおりに行動し、見知らぬ男性2名から、本件スーツケースを受け取ったが、中には絵本3冊及び本1冊があるのみで、ダイヤモンドは見当たらず、この男性2名からも何の説明もなかったというのであって、その後日本に渡航するまでの間、前記のような疑いが消えるようなきっかけや事情があったとは認められないことからすると、被告人は、本件スーツケースに入っていた絵本3冊の中に、覚せい剤を含む違法薬物が隠匿されているかもしれないと認識していたと推認できるとして、覚せい剤営利目的輸入の故意を認めた事例
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千葉地方裁判所平成30年(わ)第1188号
被害者は、3歳5か月程度の精神年齢で最重度との境界に近い重度の知的能力障害を有するところ、裸で抱き合ったりキスしたりする行為等への興味を持ち、それが日常とは切り離された特別な行為であって、恥ずかしさを伴い、第三者の前で公然と行うものではないことは漠然と理解しているものの、性差や性別の役割などに関する認知は、自己認識も含め全体的に未分化未成熟であり、性的な行為の概念的理解は到底得られておらず、性的な行為に関する被害者の理解が不十分であることに加え、自己の被害内容の仔細を述べることができていないことをも総合すると、被害者は、本件当時、性的行為の持つ社会的意味合いを理解できず、性的な行為の是非等を自ら判断し、意思決定を行うことができない状態にあったといえるから、被害者は、刑法178条1項にいう心神喪失の状態にあったと認められるとされた事例
千葉地方裁判所平成30年(わ)第292号,609号,864号,1137号,1624号
被告人Y1は、平成30年1月以降、詐欺の電話を掛けるなどのことはしておらず、掛け子の固定給を受け取っていなかったとしても、本件詐欺グループに所属し、詐欺の犯行を遂行するのに必要かつ重要な役割を果たしていたことは明らかであって、本件詐欺グループへの関与の形態が変わった面はあったにせよ、詐欺等の共同正犯から離脱し幇助犯が成立するにとどまるというほどにまでその関与の程度が弱まったものとは評価できないとされた事例
千葉地方裁判所平成30年(わ)第740号
Aの証言は、Aの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもAの番号が登録されていること、実際に被告人Y2の携帯電話機とAの携帯電話機との間に多数の通話履歴が残されていることと符合する上、覚せい剤を被告人Y2から購入した旨述べるBの証言とも合致し、その内容をみても、被告人Y2から覚せい剤を注文するに至った経緯や注文の際のやり取りについて、「覚せい剤」等の直接的な表現は避け、「ワンジー」「ゼロゴー」などと言って注文していたことや注射器を2本手に入れるために1gの覚せい剤を0.5gずつ2袋に分けてもらうよう依頼したことなどのエピソードを交えながら具体的に証言するものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Aの証言は信用できるとされた事例
Bの証言は、Bの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもBの番号が登録されていること、被告人Y2に覚せい剤を電話で注文した点については、これと符合する通話履歴が存在すること、丸めてシールで留められた状態で小分けされたチャック付きビニール袋入り覚せい剤が被告人両名方から複数押収されていること、被告人両名方から押収された出納帳に「C 5000」との記載があること、被告人Y2の使用する携帯電話に「Dさんの言う通り確かに悪いかも!Eが取り替えてって言って来てるから」「交換するのも用意してあります」とのメールが送信されていることなど、客観的な証拠に裏付けられており、その内容をみても、覚せい剤を購入するに至った経緯、覚せい剤を注文した際の状況、友人と共に覚せい剤を受け取りに行ったり、覚せい剤を交換してもらったりした際の状況等について、被告人Y2とのやり取りの内容を交えた具体的なものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Bの証言は信用できるとされた事例
Fの証言のうち、被告人Y2が配達や小分けを手伝っていたという点については、客のA及びBの各証言のほか、実際に覚せい剤入りのチャック付きビニール袋等に被告人Y2の指紋が付着していたことなどとも整合しているなどとして、Fの証言は信用できるとされた事例
これらの信用できる各証言によれば、被告人Y2は、被告人両名方で同居していたFから被告人Y1が依頼された覚せい剤の配達に同行することがあり、同被告人がFから覚せい剤の密売を引き継いだ後は、客から覚せい剤の注文の電話を受けて配達したり、自宅で覚せい剤の小分け作業を手伝ったりなどして、被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたものと認められ、これらの事情からすると、被告人Y2は、紙袋の中に入った本件覚せい剤の存在を認識しており、その所持については被告人Y1との間で共謀があったものと強く推認されると認められた事例
覚せい剤は、その所持や使用が厳しく禁じられている禁制薬物であって、日常生活の中でその意思に基づかずに体内に摂取される事態は通常考えられないから、被告人Y2の尿から覚せい剤成分が検出された場合には、特段の事情がない限り、同被告人がその意思に基づいて覚せい剤を体内に摂取したものと推認できることに加えて、被告人Y2の右腕前腕部及び右腕肘関節内側部分の血管上に複数の注射痕が存在すること、被告人Y2が被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたこと、Fが被告人両名方に同居していたときに、被告人Y2が台所のカウンター付近で、腕を紐で縛って覚せい剤を注射しているのを目撃していることが認められ、これらの事実は、いずれも上記推認を強めるものであるなどとして、被告人Y2は覚せい剤を自己の意思によりその身体に摂取したと認められた事例