東京高等裁判所令和2年(う)第80号

本件は、被告人が、密輸の実行役を担当することで比較的高額の報酬が得られる仕事ということで依頼され、密輸に関わった事案であり、また、被告人は、密輸の対象物をダイヤモンドと聞かされていたのに、違法薬物の輸入ではないかどうかを確認しようとしたり、違法薬物ではないと説明を受けたと述べながら、ダイヤモンドの密輸に関する具体的な説明も受けず、ダイヤモンドの現物を実際に確認もしていないのであるから、これらの事情は、被告人が本件スーツケースの中に違法薬物が入っている可能性を認識し、その後もその認識が解消されていないことを推認させる事情といえ、その旨判示して、被告人の覚せい剤輸入の故意、共謀、営利目的を認定した原判決の事実認定には、論理則経験則等に照らして不合理なところはないとされた事例

判決全文はこちら(閲覧にはパスワードが必要です)

東京高等裁判所令和元年(う)第1006号

被告人Y1は、平成29年12月までは、掛け子の中で責任ある立場を担いながら、詐欺の掛け子の役割を果たし、共犯者らと共謀して本件詐欺等を繰り返していたのであるから、そのような被告人が平成30年1月以降は実行行為を行っていなかったとしても、自らの名義で借りていた拠点を継続して提供し、同じような詐欺等が行われている同所への出入りを続ける中で、摘発の際は賃借名義人として捜査機関に対応するつもりであったなどというのであるから、平成30年1月以降の事実についても共謀が認められ、共同正犯が成立するのは明らかといえるとされた事例

詐欺罪が既遂となるためには、被告人や共犯者名義の口座に振り込まれるまでの必要はなく、被告人らが現金の支配を現実的に獲得すれば足りると解すべきであるとされた事例

本件は、虚偽の宝くじ等の当選話を言葉巧みに被害者らに信じ込ませ、何度も現金をだまし取るという犯行であるので、振込行為ごとに詐欺罪が成立すると考えるのは相当ではなく、被害者ごとに包括して詐欺罪が成立するとすべきであるとされた事例

詐欺罪と組織犯罪処罰法における犯罪収益取得事実仮装の罪は保護法益が異なる上、両者の行為の重なり合いの程度等からすると、これらを社会的に見て1個の行為と評価するのは相当とはいえず、両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当であるとされた事例

判決全文

千葉地方裁判所平成30年(わ)第740号

Aの証言は、Aの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもAの番号が登録されていること、実際に被告人Y2の携帯電話機とAの携帯電話機との間に多数の通話履歴が残されていることと符合する上、覚せい剤を被告人Y2から購入した旨述べるBの証言とも合致し、その内容をみても、被告人Y2から覚せい剤を注文するに至った経緯や注文の際のやり取りについて、「覚せい剤」等の直接的な表現は避け、「ワンジー」「ゼロゴー」などと言って注文していたことや注射器を2本手に入れるために1gの覚せい剤を0.5gずつ2袋に分けてもらうよう依頼したことなどのエピソードを交えながら具体的に証言するものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Aの証言は信用できるとされた事例

Bの証言は、Bの携帯電話機に被告人Y2の使用する携帯電話の番号が登録され、被告人Y2の使用する携帯電話機にもBの番号が登録されていること、被告人Y2に覚せい剤を電話で注文した点については、これと符合する通話履歴が存在すること、丸めてシールで留められた状態で小分けされたチャック付きビニール袋入り覚せい剤が被告人両名方から複数押収されていること、被告人両名方から押収された出納帳に「C 5000」との記載があること、被告人Y2の使用する携帯電話に「Dさんの言う通り確かに悪いかも!Eが取り替えてって言って来てるから」「交換するのも用意してあります」とのメールが送信されていることなど、客観的な証拠に裏付けられており、その内容をみても、覚せい剤を購入するに至った経緯、覚せい剤を注文した際の状況、友人と共に覚せい剤を受け取りに行ったり、覚せい剤を交換してもらったりした際の状況等について、被告人Y2とのやり取りの内容を交えた具体的なものであって、不自然、不合理な点はないことなどから、Bの証言は信用できるとされた事例

Fの証言のうち、被告人Y2が配達や小分けを手伝っていたという点については、客のA及びBの各証言のほか、実際に覚せい剤入りのチャック付きビニール袋等に被告人Y2の指紋が付着していたことなどとも整合しているなどとして、Fの証言は信用できるとされた事例

これらの信用できる各証言によれば、被告人Y2は、被告人両名方で同居していたFから被告人Y1が依頼された覚せい剤の配達に同行することがあり、同被告人がFから覚せい剤の密売を引き継いだ後は、客から覚せい剤の注文の電話を受けて配達したり、自宅で覚せい剤の小分け作業を手伝ったりなどして、被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたものと認められ、これらの事情からすると、被告人Y2は、紙袋の中に入った本件覚せい剤の存在を認識しており、その所持については被告人Y1との間で共謀があったものと強く推認されると認められた事例

覚せい剤は、その所持や使用が厳しく禁じられている禁制薬物であって、日常生活の中でその意思に基づかずに体内に摂取される事態は通常考えられないから、被告人Y2の尿から覚せい剤成分が検出された場合には、特段の事情がない限り、同被告人がその意思に基づいて覚せい剤を体内に摂取したものと推認できることに加えて、被告人Y2の右腕前腕部及び右腕肘関節内側部分の血管上に複数の注射痕が存在すること、被告人Y2が被告人Y1と共に覚せい剤の密売に関与していたこと、Fが被告人両名方に同居していたときに、被告人Y2が台所のカウンター付近で、腕を紐で縛って覚せい剤を注射しているのを目撃していることが認められ、これらの事実は、いずれも上記推認を強めるものであるなどとして、被告人Y2は覚せい剤を自己の意思によりその身体に摂取したと認められた事例

判決全文