大阪高等裁判所令和元年(う)第1201号

被告人は当初、身元確認はもとより職務質問自体に一切応じず、その後、運転免許証を提示し、窃盗や覚せい剤の前科を多数有することが判明し、所持品検査とともに任意採尿を求められたのに対し、一切を拒否していたところ、被告人のこのような対応により、警察官らが職務質問開始当初に抱いた窃盗や覚せい剤使用の嫌疑は、相当高まったことは明らかであり、所持品検査や任意採尿に応じるよう繰り返し働き掛けていた警察官らの行為が、説得の域を超えた過剰なものであったとは認められないとして、駐車場付近で警察官が取り囲み、腕をつかむなどした行為の適法性を認めた事例

警察官が移動手段として被告人をタクシーに乗せなかった行為について、この時点では、被告人の嫌疑は相当高まっており、令状請求の準備が開始されてから既に約2時間が経過しており、実際に、この約1時間後の午前4時30分頃には裁判所に令状請求がなされているところ、このような状況からみて、被告人の所在を確保する必要性も高かったといえ、警察官がタクシーの運転手に対し、被告人の動きに応じて、乗車させずに発進させて立ち去るよう、あるいは、乗車させたまま発進させずに待つよう告げて、職務質問への協力を要請する行為は、職務質問中であるとの状況説明もなしに、端的に協力を要請する内容を大声で告げて指示するという、丁寧とはいい難い態様ではあるものの、被告人を乗車させるか、タクシーを発車させるかという最終的な判断はなお運転手に委ねられており、被告人を現場に留めて説得を続けるために必要な行為として許容される範囲内のものと解されるとして、上記行為の適法性を認めた事例

被告人が友人であるE方居室に立ち入ろうとした際に、追従していた警察官らが、玄関前に立ちはだかり、背中で玄関扉が開かないような体勢を取りつつ、通路の壁面に立った被告人に相対し、被告人に覆い被さるような姿勢でその両肩付近の柱を両手でつかんで被告人を制止するなどして、E方への立入りを阻止した行為は、被告人の自由な行動を相当程度制圧しており、任意捜査の範囲を超えた違法なものであるとした事例

しかし、他面において、被告人に対する嫌疑は相当強くなっており、本件阻止行為があった当時は、既に令状請求の準備も整え終えて、警察署から裁判所に向けて出発している段階に至っており、その執行に備えて、所在確保はもとより、罪証隠滅の防止を図る必要性も相当高かったといえ、罪証隠滅防止の観点からは、被告人が入ろうとしていた住居の居住者との関係性に照らすと、未だ所持品検査に応じていなかった被告人が、警察官の目の届かない居室内で罪証隠滅に及ぶ危険性は格段に高まることが想定される状況にあったから、被告人が居室内に入るのを制止して職務質問を続ける必要性はかなり高かったと認められ、加えて、本件阻止行為は、被告人の行動の自由を相当程度制圧するものではあるが、時間的には約1分程度という短時間にとどまっていて、長々と押し問答をしていたと評価できるものではなく、時間的には説得したら諦めて入るのをやめたといえる程度のものであったなどとして、本件阻止行為に、警察官らの令状主義先達の意図が、具体的に疑われるとはいえないとされた事例

職務質問開始から捜索差押令状の執行まで約5時間以上という相当長時間に及んでおり、警察官が終始追従して監視を続けており、被告人に対する不利益は小さくないなどとして、一連の行為全体が違法であると認められた事例

しかし、警察官が被告人に追従して監視していた行為全体をみても、時間的には長時間に及んでいるが、必要性が認められ、相当性についても、一部違法と判断せざるを得ない部分はあるものの、違法としてその過程から得られた証拠を排除しなければならないような重大な違法、すなわち、令状主義の精神を没却するほどの違法があったとまで評価することはできないとされた事例

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